2013年10月17日木曜日

マツダ・アテンザ 「盲目的なマツダ愛か?それとも現実的な選択か?」

  ある観点からクルマを分類するとしましょう。日本で販売されるクルマは一部の特殊車両を除き、大きく3段階にわけることができます。それはずばり・・・

[レベル1]近所のスーパーに買い物に行けるクルマ
[レベル2]郊外のイオンなどのショッピングモールに堂々と繰り出せるクルマ
[レベル3]都心のデパートや高級ホテルに乗り付けられるクルマ

  クルマを買うときはこの3つをシビアに念頭に置いて選ぶべきだと思うのです。たとえ他車よりも若干性能がよかったとしても、本体価格がレベル1で200万円、レベル2で300万円を超えるようだと価格に見合っていないと断言してもよいでしょう。国産車でこの条件を超えてしまうクルマは滅多にないですが、ランエボX(レベル2相当)などのスポーツカーやレクサスCT(レベル2相当)などがこの観点ではやや高価すぎるのかもしれません。

  輸入車になるとBMW1・3・X1・X3やメルセデスC・CLA・SLK(いずれもレベル2相当)などプレミアムブランドの下級グレードでは該当車が続出します。それでも新型AクラスやBクラス、アウディA1(いずれもレベル2相当)など適正価格へ収まっているものも増えています。

  逆に200万円以下でレベル2だったり300万円以下でレベル3というクルマも、よく探せば存在します。200万円以下でレベル2のクルマはスバルインプレッサとマツダアクセラです。そして300万円以下でレベル3のクルマはスバルレガシィとマツダアテンザでしょうか。この2社の中型モデルは文句無しにお買い得です。

  レガシィも来年にはFMCを迎えて、いよいよD/EセグセダンとしてレクサスGSやアテンザと同等のサイズへ生まれ変わり、デザインもさらに高級車然としたものへ「脱皮」すると言われています。かつての5ナンバーの「ツーリングワゴン」の時代のレガシィとは似ても似つかないセダン専用車になり、ワゴンは別の車名で現行よりもむしろ小さくなるのだとか・・・。

  この新型レガシィに先鞭とつけたのが、今のアテンザです。まあスバルはマツダのやる事成す事にやたらとご執心です。いよいよマツダが起死回生の1台として、"大衆車"の殻を破るべく、作ってしまった”マーベラス”なデザインは、世界で静かに波紋を拡げています。「プレミアムデザインっていったい何?」という疑問が一斉に噴き出し始め、盟主のメルセデスは先頭を切って値下げを断行・・・、どうやらアテンザは「パンドラの箱」を開けてしまったようです。そしてドイツプレミアムブランドが日本市場に保っていた絶対的な価値を1年も経たない期間で粉々に壊したといってもいいでしょう。

  衝突軽減ブレーキ、キャパシタ、wi-fi・・・、マツダ対策にメルセデス、BMW、アウディがてんやわんやの大騒ぎです。デザインや動力性能じゃ勝てないから、せめてオプション装備だけでもマツダに追いついておこう!ってもはや完全に化けの皮が剥がれてませんか?

  なんでアテンザに勝てないようなデザインで、性能もイマイチのクルマが500万円もするんだ? これが現行の3シリーズやCクラスに対する偽らざる率直な感想です。乗ってみればアテンザの方が静かだし、路面不整への対応もできている。”ベイビー・メルセデス”もそれなりにいいかもしれないですが、いくらなんでもアテンザとの価格差が全く示せていないわけです。その結果、アテンザには輸入車からの乗り換えが殺到したようです・・・。

  "ベイビー"は東京で乗るにはあまりにも恥ずかし過ぎます。女性が乗る分には素敵だと思うのですが、男が乗ってはいけないクルマです。金持ちのドラ息子が20歳そこそこで乗っているイメージのクルマで、実際に高速のSAで見ていると職業不詳の怪しげな若者グループが現行モデル(204系/F30系)を御用達にしていたりします。まあそういうクルマです。まともなカーライフを望む人は間違っても近づかない方がいいでしょう。500万円したからと言っても特別どうということはない「普通のクルマ」に過ぎません。頑張って買ったところで、メルセデスだ!BMWだ!っていう過剰な期待はことごとく裏切られるはずです。(決して悪いクルマじゃないですが・・・)

  新型アテンザに殺到したユーザーは、「マツダファン」と「現実派」の2種類です。「現実派」の多くは、これだけクルマがあるのに、現行のラインナップにどれも満足できなかった人々です。つまらないクルマばかりが蔓延る風潮の中で、いっそクルマなんていらないかな?なんて思い始めていたかもしれません。そういう「宙ぶらりん」な人々を納得させて吸い込むだけのクルマを、あれだけ多作のメルセデス・BMW・アウディがここ数年1台も作れなかったわけです。

  「only Mercedes」や「BMWER」を開いても1ページ目から最後まで何一つ心に引っかかるものもなく、毎号終わっていきます・・・。ちょっとオーバーですが、読後はクルマ好きにとって自殺したいような気分が訪れたりします。結局のところジャガー、マセラティ、マツダ・・・たったこれだけがデザインだけで気持ちを熱くさせてくれるブランドなのでしょう。それならばマツダを買って好きな彼女とドライブで「現実逃避」するのが正解では? クルマに対してやや鬱病気味な頭にそんなことがいつも浮かんできます・・・。

  

  

  

2013年10月2日水曜日

トヨタ・オーリスRS 「AE86の正当な後継車は・・・」

  去年、トヨタとスバルが久々のFRスポーツカーとして開発した「86/BRZ」は、話題を先行させるためか車名を「86」として、かつてのAE86の後継車であるかのようなプロモーションを繰り広げました。その甲斐もあって販売は非常に好調に推移していて、トヨタとしてもスポーツカー市場の可能性を再認識できたと思います。海外では廉価なスポーツカー専用設計車として最大級の賛辞をもって迎えられました。

  日本でもその素性の良さから考えて、車名に関係なく大ヒットしうるポテンシャルを秘めたクルマだったと思います。もし86ではなく違う名前だったならば、あるいは最終的にはもっと売れたかもしれません。もちろん「86」という名前で多くの某漫画のファンを惹き付けることに成功した部分も当然にあるでしょうが・・・。

  しかしそもそもトヨタ86はいったいどういう了見で、AE86の後継車とみなすことができるのでしょうか? AE86はごくごく普通の乗用車に4A-GEという新開発のツインカムエンジンを搭載してスポーティな走りを実現したモデルでした。一方のトヨタ86(FT86)は完全なる専用設計のスポーツカーであり、エンジンもまったく設計が違うスバル製のボクサーエンジン(FA20)を使っています。ハッキリ言って全く別の「家系」のクルマと言えるのですが、プロモーションのために無理矢理に同じ名前を付けてしまったようです。

  AE86に使われていた4A-GEですが、AE92、AE101、AE111と改良を受けながらも使われ続け、最終型セリカ登場の1999年に後継エンジンの2ZZ-GEが登場しバトンを引き継ぎます。AE92以降のトヨタの小型(Cセグ)スポーツモデルはFF車となっていましたが、それでもトヨタはスポーツグレードを欠かさず設定し、セリカだけでは捌けない2ZZ-GEを同クラスの乗用車(カローラフィールダー、カローラランクスなど)に6MTで設定しました。

  この時点での日本市場向けのカローラは欧州向けと基本設計が同じでした。2ZZ-GEを搭載したカローラランクスZエアロは、トヨタが欧州向けに作ったホットハッチです。1.8LのNAながら190psを絞り出す高性能エンジンをヤマハに発注し、このエンジンを載せる事で1997年に登場して欧州を席巻した初代シビックtypeR(EK9)と互角に戦えるクルマをトヨタはしっかり作っています。

  このカローラランクスのプラットホームは、国内のカローラファミリーへと引き継がれず、トヨタの欧州戦略車として、欧州版カローラとなり、そして日本市場ではオーリスという車名に変わりました。ヤマハに発注した2ZZ-GEは見事に予定数を売り切ったのですが、販売に苦慮したトヨタは2006年からZRエンジンへの全面切り替えを行い、オーリスには2ZR-FEという144psの1.8LでNAのエンジンが新たに充当されました。

  ロータス・エリーゼにも2ZZ-GEに引き続き供給されているエンジンで、ミニバンからスポーツカーまで幅広いバリエーションを持っています。まあ汎用エンジンで間違いないのですが。2代目オーリスには新たにRSグレードが設定され、2ZR-FEに6MTを組み合わせたスポーティなユニットは、トヨタ車のナチュラルなスポーツフィールが楽しめる、由緒正しいAE86の後継モデルと言ってもいいのではと思います。

  そんなことをボソボソと言ったところで、世間の認識が変わるわけでもないでしょう。「ハチロク」の後継は「86」と認知されたままでしょうし、オーリスと言えば「シャア専用」というのが相場なんでしょうが・・・。