2014年12月17日水曜日

BMW i3「使い勝手の悪さが魅力かも」

  たくさんの自動車評論家がこのBMWが発売した新型EVを、一生懸命に擁護しておられるのを見ると、失礼ですがいつも苦笑してしまいます。セカンドカーなんてポジションは許さない万能な乗用車ばかりを手掛けるBMWが、「ザ・セカンドカー」を作ってきたわけですから、これには少々面食らってしまったのかもしれませんが・・・。かつてアストンマーティンにシグネットという400万円もする超コンパクトカーがありました。あくまでアストン・ユーザーにだけ購入が許される「オマケ」商品であり、トヨタのiQをOEMしたものだったということもあり、日本のカーメディアはとりあえずは完全無視を決め込んでいたようで、そこに言及する自動車評論家は皆無といっていいくらいでした。セレブのオシャレなセカンドカーといった立ち位置を考えれば、シグネットもBMWi3も同じ性質のクルマですね。

  知り合いのBMWファンのクルマ好きも、このクルマがなかなか放っておけないようで、「これは意外にも本格的な造りなんですよ!」と彼に会うたびに聞かされてる気がします。もちろん話を聞いて「なるほどね〜」と唸るポイントもいくつもあるのですが、滑稽なことに、そもそもこのクルマのコンセプト全体を一般的なBMW好きは一体どれだけ受け入れているのか?とも思ってしまうわけです。この手のクルマをこよなく愛してくれるのは、BMWファンなどではなく、「スバルR1」やちょっと古いですが「日産パオ」あたりを長く愛し続けてしまうタイプのちょっと変わり者が多いんじゃないのか?とふと思ってしまいます。

  さてそんなややこしい話は置いておいて、「満タン充電で最大航続距離が150km」という強烈すぎるキャラクターに、かなり前向きな感情が持てる人は、おそらく自動車雑誌を読んだり自動車関連のブログなどを見ている層には少ないと思います。だからといって購入者の大半はクルマにあまり興味がない人々だ!と言い切ってしまう勇気はないですけども、評論家が掲げるやたらと堅苦しい賛辞を見ていると、どれもこれも結局のところ内容が「軽い」です。大変失礼ですが、真剣にこのクルマの存在意義や開発者のヴィジョンに向き合おうとしていません。まるでエルメスやルイヴィトンが作るペット用ハーネスでも品評するかのような脱力感が漂っています。しかしそんなお気楽なレビューとは別にこのi3の存在感にただならぬものを感じたりするわけです。どうやらこのクルマを理解するにはもっともっと頭を柔らかくする必要があると思います。

  まず航続距離150kmですから、高速道路で都内から長野県あたりの景色がきれいなところへ出掛けるなんて、ほぼ物理的に不可能です。充電スポットを宛てにしても1回の急速充電完了まで30分待ちというだけでイライラしてしまいそうです。ただし1回500円で満タンになって100kmは軽く走るならば、プリウスが50Lで1000km走るのと比較してもかなり割安と言えます。遠くまでドライブするのには全く向いていませんが、例えば仕事から帰宅して片道30分(10km)程度の距離にある彼女の家にちょっと出向いたりするのに、週に3回通っても気にならないほどの良好な燃費に加えて、それなりにしっかりとしたオシャレさと高級感を持ち合わせているという意味ではかなり魅力的なクルマと言えます。

  さらに「長距離ドライブはかなり退屈」というクルマ好きがなかなか直視しようとしない現実に勇気を持って向き合うことで、このクルマの価値はグンと高く感じられると思います。「思う存分に走るぞ!」という不毛な幻想にいつまでも浸っていてはダメだと、薄々は気がつき始めている人にとっては、「禁煙パイポ」的な意味でこのクルマに乗り換えることで新しい生活が運ばれてくるかもしれません。自分と彼女の休日を目一杯使ってドライブ・・・しかし実際は高速道路を500kmも走ればガソリン代と高速代で15,000円あまりかかります。冷静に考えれば、東京ディズニーランドでフリーパスで楽しめるくらいの金額を消費しているわけです。クルマもドライブも好きだけど、時間とお金の無駄遣いになりかねない休日の日中のビジーな道路事情に嫌気がさしている人にとって、このBMWi3は魅力的な代替案を突きつけてくれます。ドライブを楽しむならば深夜に短時間で快適なクルーズを!というのはなかなか清々しい結論ではないですか?

  「遠くには行けない」という限定された性能のクルマというのは、ユーザー側がその分使い方をあれこれと工夫をしたくなります。だからといってどうなるものでもないですけども、考える過程にいろいろと楽しみがあったりするはずです。150kmしか走れないですから、自宅から30km圏内で最も楽しいドライブが出来るスポットはどこか?と血眼になって探しまわる必要があり、その結果わざわざ箱根や群馬県の有名な峠ルートまで出向かなくても、多摩丘陵の付近にとても良いワインディングコースが見つかったりします。BMWi3ならばそこで楽しむより他にないわけですから、感情に任せて深夜に景色の全く見えない山岳路を登るなんてややマヌケな行動はしなくなります。これがプリウスに匹敵する燃費性能を備えたレクサスCT200hだったら・・・。内装の豪華さに関しては深夜に彼女とデートドライブするのに良いですが、大して面白くもないドライブフィールに包まれながら、深夜に箱根行脚をするといった愚かな考えが頭を過ることがあるかもしれません。

  「150kmしか走れないからこのクルマがいいんだ!」という新しいメンタリティこそが、BMWの新しいコンセプトを理解する上でとても重要なことだと思います。航続距離が500kmまで伸びるテスラ・モデルSならば、特に説明するまでもなくクルマの価値が伝わるでしょうが、このBMWi3の価値を必死で伝えようとしている自動車評論家はどうも空回っている気がします。特にライターとしての生き残りに必死な様子の還暦のライター(国沢光宏、熊倉重春など)が「EVならまかせろ!」的なスタンスを取っていらっしゃいますが、どうも軽自動車かなんかの代わりくらいにしか考えていない感じがプンプンします。もっと若くて柔軟な考えを持った自動車評論家が、これまで考えてもみなかったEVの可能性についてしっかり語っていくことがプレミアムEVの普及と低価格化をもたらすと思うのですが・・・。


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2014年12月4日木曜日

スイフト・スポーツ 「ミニに乗ったあとはスズキに行ってみよう!」

  前々から思っていたのですが、「スイフト・スポーツ」というネーミングでやっぱり損をしているかもしれないですね。スイスポもすでに第3世代に突入して今更なんですが、もうちょっとあれこれと売り方を工夫すれば、現在のマツダやスバルのような「日本車の代表」みたいなポジションにすんなり落ち着いたような気がします。何が言いたいかというと、このクルマの基本性能の高さは目を見張るものがあり、おそらく国産・輸入問わずにB、Cセグメントにおける最もドライブフィールに優れたクルマだということです。このクルマをスポーツ走行が好きな人々だけに使わせるのはもったいないくらいです。

  このスイスポを「スイフト」と命名してスタンダード化して、ベースモデルのスイフトを「スイフト・エコ」とでも名付けて廉価版にしたらどうですかね。決してベースモデルも悪いクルマじゃないですけど、やはり日本向け仕様のドラムブレーキなどややプアな装備が目立つと、やはりクルマとしての素性が・・・という話になってしまいます。日本車への批判はそのほとんどが小型車に集中しています。低価格実現のための企業努力が理解されずに、本体価格が2倍以上高い輸入車とガチンコで比較されて、酷評されるケースが多いですね。結局のところ経営能力に優れるトヨタとホンダが日本のコンパクトカーの基本構造を決めてしまい、日産・スズキ・マツダ・三菱がその土俵で争うという構図でこの10年くらいは経過しました。

  そんな業界のルールの中では、乗り出し価格で230万円ほどになるスイフト=スポーツがスズキのBセグの「顔」と言い張るのは難しく、あくまで特殊用途のスポーツカーという位置づけで、ディーラーやユーザーを納得させるしかなかったようです。燃費も20km/L越えが当たり前のクラスにおいて14.8km/Lとかなり控えめな数値です。「価格と燃費で勝負しないBセグ」というコンセプトは今でこそユニークで見所がありますが、はやり薄利多売が国産Bセグの主流であり、スズキのブランドイメージもそのど真ん中にあるので、思い切った戦略を取りづらい部分もあるのでしょう。

  スズキの軽自動車はマツダブランドでもOEMで販売されていますが、このスイフト=スポーツもマツダブランドで販売すると面白いかもしれません。あくまで独断と偏見によりますが、スイスポこそがマツダが作りたがるドライビングプレジャーが満載の理想的Bセグであり、逆にデミオXDこそがスズキが求める経済性に優れたリーズナブルなモデルだったりします。いっそのことスイスポとデミオXDを交換して「デミオスポルト」と「スイフトXD」にすればいいのでは?マツダがCMで使う「Be a driver」のイメージにぴったりのクルマを日本でも有名な国内外のブランドから選ぶとすれば、とりあえずスイスポになりそうです。

  マツダが「Be a driver」として訴えるドライビングフィールの良さは、やはり輸入車へのコンプレックスの表れに他ならず、ブランド全体として輸入車と乗り比べても全くひけを取らない乗り味を目指したいようです。BMWやアウディに乗ったあとで、マツダ車に乗ったとしたら、かなり多くの人が「マツダもなかなかやるな!」と思うでしょう。素直に乗り比べてしまえば、コストパフォーマンスも含めてかなりの確率でマツダ車が有利かもしれません。しかし「スイフト=スポーツ」ならば、話はもっと単純でBMWミニやVWといった輸入車ブランドのBセグ車に乗ってからスイスポに乗れば、その実力の違いは歴然としています。もはやコスパなんて関係なく、スイスポは気持ちいいです!

  具体的に言うと、アクセルとブレーキのしなやかでリニアな操作感にまず痺れます。たとえCVTモデルであってもビックリするくらいに不快感はなく、1040kgの車重に比して余力のある1.6L(自然吸気)エンジンの低回転域では、エンジン出力をトルコンATよりも余さずに繋ぐというCVTの隠れた良い面が体感できる貴重なクルマです。スバル車のようなAWDで1500kgに迫る車重だとCVTのかったるいシフトチェンジが伝わるなど、ネガティブな面が目立ってしまいますが、1000kg程度の軽量車にとってはCVTの恩恵は世間一般で言われているよりはるかに大きいのですが、日本の小型車は足回りなどトラクションに関わる諸条件での設計の甘さが響いてそれほど効果的な走りができなかったりします。

  多くの評論家は安易にCVTに責任を押し付けたがりますが、スイスポくらいシャシーも足回りもマジメに作られてしまうと、それらがほぼ全て詭弁なのがバレバレです。VWがツインクラッチを有効に使って、CVTではどうにもならない1300kg程度の車重を気持ちよく走らせていますが、スズキにはスズキの、VWにはVWの理屈というものがあって、それぞれに最善の選択をしていると言えます。マツダの新型デミオがCVTからトルコンATへと回帰したのは、ディーゼルのトルクが使えるミッションを限られた経営資源の中から効率よく選定した結果だそうです。各メーカーともにそれぞれの正義を掲げているわけですが、CVTだからDSGだからという単一の議論に終始する愚かな評論家って結構いますよね。

  スイスポの良い点をさらに挙げると、極上のアクセルとブレーキフィールに加えて、ハンドリングの良さも大きなポイントです。ドイツの雑誌でも高く評価されています。ドイツではポルシェ・ケイマンやロータス・エリーゼ、マツダロードスターなどのスポーツカーと並んでB/Cセグのホットハッチもハンドリングマシンとして高い評価を受けていますが、プジョー208GTiやゴルフGTIといったホットハッチの定番モデルに混じってスイフトスポーツも絶賛されています。同クラスのVWポロは日本未発売の「ポロR」というグレードがスイスポに対抗できるモデルとして挙げられています。日本でもコアなファンが多いですが、ドイツでも多士済々なホットハッチの重要な一員として認知されているようです。

  そしてハンドリングとはややニュアンスが違うかもしれませんが、電子制御があれこれとトラクションをコントロールして走らせることが多いDSGを使ったモデルよりも、ハンドル周りやアクセル周りに余計なものが一切付いていないと感じられるシンプルなフィーリングは、日本で発売されている他のホットハッチよりもかなり好印象です。こういうクルマを評してスポーティと言うべきであって、電子制御がガチガチながらも割と滑らかに発進できるゴルフGTIの設計における意識の高さこそ認めますが、やはり「クルマ本来の魅力」に忠実なのはスイスポなんだなと思います。マツダ・デミオXDがやたらともて囃されていますが、なんだか高級車のように勿体ぶった出力の出し方になんだか嘘くさい感じがしないでもないです。

  多少語弊があるかもしれないですが、スイスポを迷わずに選べる人は「正直者」です。その一方でデミオXDやVWポロのような、メディア主導に乗っかっただけのクルマを有り難がるのは、決して悪いとは言いませんが、あとで後悔することがなければ良いなと思います。BMWミニに3年乗って残価設定クレジットでは「60%保証します!」なんて驚きの数字を出されるとかなり心がグラついてしまうかもしれないですが、そんな人にはミニに乗ったあとにすぐにスズキに出掛けていって頭を冷やしたらいいでしょう。マトモな人ならば、ミニ・クーパーSを430万円で購入して3年で60%保証してもらったとしても、スイスポを225万で買ったほうが間違いなく3年間での車体の減価償却はスイスポの方が少ないということに気がつくでしょう!しかもスイスポの方が断然に走って気持ちよかったりします・・・。


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2014年4月12日土曜日

日産ノート 「小型車の流儀とNISSANの誇り」

  現行の日産ノートが登場したときは、日産に対しての「憎悪」と「嘲笑」の気持ちがありました。「なんか日産ってズレてるよな・・・」。これが率直過ぎる感想で、日産は小型車を「ナメてるのでは?」という色眼鏡もあって、どうせ新興国向けのクルマを日本で適当に売りさばきたいだけじゃないの?って完全に懐疑な視線。そもそもCMにジャニーズタレントを起用するなんて・・・完全にユーザーを馬鹿にしているとしか思えない!

  トヨタやホンダが巨額の開発費をかけて、世界最先端のHV技術で争っている国内Bセグ市場に、東南アジアで売ってそうな1.2Lガソリンエンジンで今さらに参入って・・・。どれだけやる気ないんだよ!って雑誌にも叩かれてました。普段はカーメディア嫌いなのですが、この時ばかりは「そうだ!そうだ!」って思わず同調しましたね・・・。非HVだとしてもVWゴルフみたいに静音・制振設計だというならまだ受容する余地がありますが、明らかにマーチ/ティーダ/ラティオといったラインを後継する小綺麗な新型車でしかなく、しかも「うるさい、燃費も良くない、価格も高い」って一体誰得だよ!?

  さてここまで来てひとつの疑問が・・・。ド素人の私でも「最低のクルマ」で試乗する価値もないと思ってしまうようなモデルを、世界のトップメーカーである日産がわざわざ投入するなんてことがあるのだろうか? アクア登場以降、完全にマイナーな存在になったヴィッツの1.3Lモデルを、そのまま「なぞった」ようなクルマを今さらのように出してくるものだろうか? 今や軽自動車に押されて無個性なBセグなんてどんどん淘汰されている時代なのに・・・。案の定、日産ユーザーからもラティオを残して!という声が・・・。

  どうせ欧州・中国・東南アジアで使い倒すためのルノーと共通の1.2Lなんだろう!と完全に日産で最近顕著に見られる経営合理化のストイックな姿勢から想像していましたが、去年の暮れになって「自動車ガイドブック(日刊自動車新聞)」を何気なく見ていると、ノートの1.2LエンジンはNAとスーパーチャージャーでは異なっていて、日本で売られているマーチのものとも、欧州で売られているルノー車のものとも違うことが判明・・・。

  経営合理化を強引に押し進めているイメージがあったルノー日産グループですが、1.2Lエンジンだけでも複数のバージョンがあり、しかも3気筒も4気筒もありその市場の道路環境によって細かく作り分けているとは・・・思いもよりませんでした。よくよく考えるとこれは結構スゴいことなんですよね。日本ではおなじみのトヨタやホンダの小型車向けHVは走行環境の違う欧州ではなかなか受け入れられず低迷。北米ではそこそこ売れていますが、カムリやアコードの売れ行きに比べればまだまだマイナーな存在。小型車そのものが北米では市民権を得ていないようですが・・・。

  そして欧州王者のVWの代表的小型車エンジンである「1.2/1.4Lガソリンターボ(TSI)」も受け入れられている地域はとても限定的なんですよね。欧州では10ほどあるパワーユニットの一部でしかなく、そもそもディーゼル(GDI)が半数を占めるわけですから・・・。確かに小排気量なのに高速燃費が視野に入っている点は評価できますが、日本の都市部の混雑道路を走るのには全く向かないですし、北米では「さっぱり」であまりの不人気っぷりにゴルフ7以降は廃止されてしまったくらいです。

  そういった現状が日本のカーメディアによってねじ曲げられて伝えられていて、その一番の被害者が日産なのかもしれません。なんだかんだで一番マジメにやっているのは日産では?その緻密に作り分けた1.2Lエンジンはどれもエンジンとしては世界最高水準です。そして主なものは全て日本で乗る事ができます。ルノールーテシア/キャプチャーに使われる「H5ft」は4気筒ターボで燃費以上に「走り」が絶賛されているエンジン。日産ノートのNA及びマーチで使われるのが「H12DE」で3気筒エンジンでこれは新興国向けの廉価モデル用ですね(ノートのNAはもっと安くてもいいのでは?)。

  そしてノートのスーパーチャージャー仕様に使われるのが「H12DDR」という3気筒エンジンでスペック上はボア×ストロークが「H12DE」と同じなので共通と思いきや、「直噴化」「ミラーサイクル化」がされていて、ホンダの新型フィットがトヨタ越えを狙って開発した新型HVと同じ方向性の改良が施されています。「何でスパチャー?」というのも日産の周到なシュミレーションによるもので、バッテリー搭載や熱処理など小型車にはハードルが高いHVよりもシンプルな設計を目指すのが得策と考えたようです。つまりホンダは「ミラーサイクル+HV」のところを日産は「ミラーサイクル+スパチャー」で熱効率の極限を目指したということです。

  4気筒の「H5ft」はターボ過給で、3気筒の「H12DDR」はスパチャー。この辺りの芸の細かさにエンジン技術における日産のプライドが滲んでいます。確かにハイブリッド技術は日本の混雑道路を想定すると素晴らしいものですが、それ一辺倒になってしまうのも考えものだ!という達観の境地に達した日産の極めて「大人」な提案が、この「ノート」のスーパーチャージャーなんだなと思いますね。いやはや愚かな勘違いをしていた自分が恥ずかしい限りです。



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2014年4月2日水曜日

ホンダ・ヴェゼル 「クルマ=アップル的ガジェットの時代へ・・・」

  アウディが昨年発売した「ゴルフ高級版」ことアウディA3の存在がほとんど忘れ去られている。ベース車のゴルフハイラインがライバル輸入車メーカーよりも高い価格設定なので、それよりもさらに高価なA3が敬遠されてしまうのも何となくわかります。アウディがA3を発売したときに強調したのが、「クルマの中でネットが使えます!」というシステム。どうもこれがクルマ好きには全くウケていないようで、複数の評論家が「もっと他にやることがあるだろう?」と辛辣な意見を投げかけていました。

  その一方で産経や東洋経済など「一般紙」のクルマ記事ではA3の先進性を称賛する声もありました。「アップルやグーグルのような発想でクルマが作られる時代」みたいなことを言ってましたが、これはなんかちょっと違う気する・・・というより「理解のレベル」がとても低いです。クルマに無線LANを設置すること自体は1980年代の「自動車電話」と同じレベルの発想です。もちろん運転中のネットって誰が考えても危ないですし・・・。アウディもマツダも「クルマのIT化」に関してはやってることは全然新しくないし「アップル的」でもない。そんなものに価値を見出す人のセンスは全く以てオカシイ!

  むしろアップル的な発想がクルマ作りに与える良い影響は、このホンダ「ヴェゼル」に感じることができます。自動車には「高級車」という概念が未だに存在しますが、アップルの製品「i-phone」や「mac book air」には特別に「高級」というイメージはありませんし、価格設定も極めて平凡な水準に押さえられています。ネット通販で買えば、「エイサー(パソコン大手の台湾メーカー)」とほぼ同スペックのものでは同価格です。それでも他社のスマホやラップトップには絶対に負けない「性能」と「質感」を有していて世界各地の特にお金が無い若者に熱く支持されています。

  アップル製品はユーザー目線でとても「合理的」で「価格・性能・質感」の3つを並立させるという、これまたごくごく根元的な発想で設計されています。もちろんこの当たり前のことをやるのがとても難しいのですが・・・。やっていることは何も新しくないけども、これまでの幾多のパソコンメーカーが決して登り詰めることが出来なかった高みへと辿り着いているので、「斬新」に感じるのかなという気がします。

  さてホンダ「ヴェゼル」ですが、このクルマこそがいよいよ日本メーカーが辿り着きある「高み」に一番近いところにやって来たようです。まるでアップル製品のように「きっちり使い切れそう」なほどよいボリューム感がまず第一印象です。持て余さない大きさなんだけど「画面は決して小さ過ぎない」アップルのように、車内のスペースはとても効率的です。インパネやトリムの質感も価格を考えると十分以上どころか軽く「サプライズ」なほどに満足させてくれます。製造コストはたいして掛けてはいないと思いますが、設計者のセンスでそれをカバーしてます。

  そして最近ではフランスなどでも大流行の「都市型SUV」。パソコンで例えるならば必要なスペックをきっちり収めた「ネットブック」でしょうか。制限速度が低い日本のどんな道でもヴェゼルHVならば「必要十分」に走るだけの性能はありますし、特に遅いと感じることはないです。日本メーカーが世界に誇る小型車技術は「都市環境での移動」においては輸入車を寄せ付けないだけの素晴らしいものがあります。日本の都市部の世界最高レベルに整備された道路を、法定速度を守って走る限りでは「車軸式サス」でも乗り心地が大きく劣ることはないはずです。

  「ネットブック」が持たないような、「高性能なCPU」「ハイスペックなメモリー」「大容量のハードディスク」なんてよっぽどヘビーな「ゲーマー」でない限り要りませんし、今どきゲームなんて人によっては「時間の無駄遣い」以外の何者でもないと考えるでしょう。そういう人にとっては400psオーバーに8速AT、高性能サスを装備した「高級車」なんて時間では無く「お金の無駄遣い」に思えるわけです。オーナーの皆様には大変に恐縮ですが、「レクサス、メルセデス」=「ゲーマー専用機」wwwという意見はなるほどと思ってしまいました。





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2014年3月24日月曜日

マツダ・デミオ スポルト 「マツダはロードスターだけではない!」

  日本メーカーでは珍しく「乗り味」を重視すると言われるマツダ。実際は・・・特には特殊な構造をしているわけではないです。世界的なハンドリングマシン「ロードスター」は確かに基本設計からして「個性的」で、お手頃な価格ということもあり「日本車史上」に残る傑作車。これはあくまで「スポーツカー」としてマツダが理想を追求した結果であって、これ以外の普通車ラインナップには大した仕掛けはないです。

  最近では「法定装備」が増えてしまって、ロードスターでも公道車である以上は結構な重量になってしまいます。これにはマツダの開発者も相当に頭を悩ませているようで、次期NDロードスターはエンジンをダウンサイジングして、軽量化を目指さざるを得なくなったとか。マツダの乗り味の良さは「軽さ」に支えられていたわけで、現状ではどんどんとマツダにとっては悪い方向へとか設計環境は進んでいるわけです。

  そうなってくると俄然盛り上がってくるのが、マツダの最軽量普通車モデル「デミオ
」。ジュネーブモーターショーで発表された次期モデルのコンセプトもかなり注目を集めていましたが、マツダも「デミオ」のクラスに大きな将来性を感じている様子です。現行デミオにも「スポルト」というロードスターよりも100kg軽いスポーティなモデルがありまして、マツダを「ハンドリング」のブランドと割り切るならば、ロードスターとともに「2トップ」を形成する秘蔵っ子です。

  1.3Lのデミオと同じ車重に抑えられていながら、1.5L(113ps)の「ZY-VW」というエンジンは、スズキの小型車向け(K12B)のようなスクエア(ボアとストロークがほぼ同じ長さ)型が特徴で、日本の小型車向けエンジンとしてはかなりスポーティに噴け上がります。VWやプジョーの湿気た1.2L(基本的にやる気がない)とは違って、小型車で勝負しようというメーカーのプライドがそこにはあります。

  ちょっと横道それますが、マツダとスズキは小型車エンジンにやたらと手を加えるのが好きなブランドで、ガソリンエンジン車の燃費の頂点を狙えるのはこの2社とホンダに限られているのが現状です。豊富な予算でアトキンソンサイクル化を進め熱効率を重視するホンダ。既存技術の組み合わせ、特にインジェクター(燃料噴射装置)の改良で「燃焼効率」を重視する2社。マツダは「直噴」でスズキは「ツインインジェクター」。かつてフェラーリ288GTで実用化された技術が現行スイフト(ガソリン車燃費でフィット越え!)に使われています。

  現在の欧州ではA/Bセグが熱いわけですが、マツダもスズキもその中心的なブランドを形成しています。何よりデミオの技術を使った「フォード」とスイフトの技術を使った「オペル(GM)」がEU各国で覇権をめぐって争っているわけで、代理戦争のはずが全欧州を巻き込む大決戦になっています。つまりBMWやメルセデスにもクソみたいなパクリ車を生んだ「ロードスター」よりも、「デミオ」の方が欧州のさらに深いところにまで達していると言えるのでは? 

  いよいよフォード版デミオの「フィエスタ」が日本でも発売されますが、欧州誌のハンドリング評価では「A45AMG」に完勝(相手はAWDなのだから当たり前だが・・・)など前評判は上々なようですが、そもそもデミオ・スポルトの実力だって相当に高い!デミオとフィエスタおよそ50万円の価格差はデザイン等を考えても不当なレベルじゃないですか・・・。



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2014年3月17日月曜日

日産・ジュークターボ 「モリゾー社長を最も刺激した一台はこれでは?」

  最近の新型車を見ているとトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバル・スズキ・三菱・ダイハツ・・・みんな同じ方向を向いているようですね。自動車で喰ってきた人々は結局は皆同じようなことを考えるようになるのかな。どのメーカーも「遊び心」があるクルマをせっせと作るようになってきました。最近じゃ「遊び心」の押し売りみたいになってきて、生活の足として街中をウロウロするだけのお年寄りがジュークにちょこんと乗っている。いや全然変じゃないですよ・・・いいと思います。

  その内にスズキ・ハスラーを乗り回すお年寄りが、日本中で車中泊を繰り返すようになるのでしょうか? そういえばRCZやシロッコに乗っているのは高齢者が多いような気がします。自動車メーカーが考える「遊び心」って結局は高齢者を主に捉えていますね。私も痛いほどに身に覚えがあるのですが、若い人間ほど「虚勢」を張りたがるわけで、メルセデスCLにあこがれつつ中古のセルシオに乗りたがる・・・。

  そんな「遊び心」の先駆者的存在なのが日産ジュークですかね。このクルマの2010年のデビューを皮切りに日本メーカー全体がガラガラと変わってきましたね。マツダなんかがその後は注目されましたけど、どうやらこの頃に最も積極的に社内を改革し、震災が起こっても優秀なスタッフに支えられていち早く生産体制と整えるなど、日産の自動車製造業としての姿勢は他のメーカーを大きく凌いでいたようです。

  この日産の動きに呼応・追従して各社ともに経営陣の交代が行われて、「遊び心」だとか言い出し始め、さすがというべきかホンダもマツダもスバルもなかなか骨太なヴィジョンを掲げて見事に復活しました。出すクルマが次々にヒットする100発100中状態がいつまで続くかわかりませんが、2000年代の終わり頃には「ヒュンダイにまとめて抜かされる」と揶揄されていた日本の自動車メーカーは目下のところグローバルでも絶好調です。

  日産はこのジュークの成功で2年ほど前から欧州とロシアでのシェアを押し上げました。「個性的な外装」と「センスある内装」指先にまで神経が行き届いている感覚が日本の大衆車にはこれまで無かったポイントなのかなと思います。「遊び心」という言葉が安易に使われますが、ジュークが見せたような「コンセプト」への飽くなき執念をどこまで妥協無く貫き通すか?というクラフトマンシップの限界に挑む「厳しい世界」なんだということが解ります。

  今後、この原則を履き違えた「くだらない遊び心」のクルマが登場するかもしれないですが、そんな愚かなメーカー第一号はどこになるのでしょうか?



  ↓ジュークの兄弟車が日本上陸!「遊び心」コンセプト・・・完璧です。




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2014年3月10日月曜日

マークX G's 「トヨペットのエースは不滅だ!」

  トヨタの系列販売店の中で一番の苦境にあると言われているのがトヨペット。東京トヨペットはクラウンの取り扱いが認められていますが、その他のトヨペット店はフラッグシップモデルのマークXにハイブリッドを設定するようトヨタ本社には何度も陳情が行われたようですが、なかなか実現しないまま今に至っています。トヨペット店も2014年になって大人気SUVのハリアーが復活して息を吹き返しつつあるようです。

  マークXは「お手軽なFRの高級車」といったクルマなんですが、お手軽でお得なのだから人気が出る!というわけにはいかないようです。「お手軽だったら高級車じゃないだろ!」とクルマのことよくわかっていない人々が、やたらめったらと批判をするのでクルマに詳しい人ならばマークXの悪口を何度と無く聞いたことでしょう。私の考えとしてはBMW3シリーズやメルセデスCクラスが高級車に分類されるならば、マークXも当然に高級車で良いと思います。

  このクルマの最大の弱点は日本国内専用として開発されていることです。日本専用なんてスペシャルな普通車を今どき作っているメーカーなんてトヨタ以外にはほとんどないわけですが、どうもグローバルで評価されているクルマの方が説得力があるという、なかなか無茶苦茶な理論でマークXやクラウンは厳しい評価が目に付きます。国内専用車には当然ながら250km/hでアウトバーンを巡航させる性能など要求されません。よってマークXやクラウンはその速度を想定したクルマ作りをせず、もっと日本の実用域での快適性に力点を置いています。250km/h超での高速安定性と実用域での快適性はクルマ作りにおいてトレードオフの関係にあるわけです。

  気がつけば、国内市場でマークXのライバルとなるクルマはドイツ車を始めとする輸入車、スカイライン、アコード、レガシィ、アテンザとどれも高速安定性を追求したクルマばかりになりました。ただしこの中でどれが高級車として相応しい性能を有しているかというと、「乗り心地」「静粛性」の観点ではマークXが最も優れています。これはこの2点では絶対に負けないというトヨタの伝統が生きているからです。トヨタのクラウンは1955年から作られる長い歴史を持ったモデルですが、この積み上げたFMCの果てにトヨタは世界でもっとも静かなセダンを作り上げます。

  このクラウンのノウハウを詰め込んだセルシオを旗艦としてアメリカでレクサスを創設します。当時8気筒のセルシオが、12気筒を積むメルセデスやBMWを超える静粛性を発揮し世界を驚かせました。「静かな国・日本」からやってきた驚異のスーパーサルーンはアメリカの高級車市場を席巻しました。トヨタの12気筒センチュリーはさらに静かに走ったそうです。

  よくドイツ車に乗っている人が、「ボディが堅牢で、中はびっくりするぐらい静かだよ」とか言っています。確かに100万円そこそこの日本車よりも静かかもしれませんが、決してメルセデスやBMWは「静かな」メーカーではありません。実際にBMW3シリーズとマークXを乗り比べれば、「乗り心地」も「静粛性」もハッキリとトヨタが上回っています。それでも評論家がBMWを強調するポイントとしては、高速旋回への対応としてサス剛性が高い(乗り心地は悪くなる)ことと、ハンドリングの精度、ブレーキやアクセルのレスポンスが良いといった点です。

  実際に3シリーズとマークXを設計レベルから比較すれば、トヨタの採用しているシャシーの方がD/Eセグ高級車向けであらゆる点で構造上の優位性を持っています。3シリーズのシャシーはC/Dセグ向けのBMW・L7プラットフォームで、現行の3シリーズのボディが上限ギリギリの設計です。簡単に言うと3シリーズのライバルは実はマークXではなく、北米や欧州に輸出されているカローラなのです。「カローラクラス」のシャシーに高級車調のボディを載せた3シリーズと、「クラウンクラス」のシャシーを流用してやや小振りのキャビンを付けたマークXが同じ土俵で比べられているわけです。

  そして評論家の皆様は、「乗り心地」ではなく「乗り味」を引き合いに出して、この両者を比べます。それはトヨタがマークXを「スポーティセダン」と言って憚らないからなのですが、林道をマークXとカローラで同じエンジン積んで走ったらどっちが楽しいか?と比べているに過ぎません。小型なボディにパワフルなエンジンを載せて楽しいクルマを作るという欧州車の伝統を否定するつもりはありませんが、それを高級車らしさと誤解していらっしゃる方々が多いのが残念です。

「BMW3とマークXの比較動画vol.1」へのリンク
「BMW3とマークXの比較動画vol.2」へのリンク
「BMW3とマークXの比較動画vol.3」へのリンク


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2014年3月3日月曜日

カローラアクシオ 「ちょっとマイナーになって乗り頃」

  日本車は流行に敏感だ。いや敏感すぎるのかな? クルマのコンセプトを決めたらそれを育てる努力をせずに、アイディアの使い捨てをしていると言われても仕方がないほどに移ろい続けている。逆にマツダやスバルのようないわゆる「かぶれ」ブランドは、クルマ作りの哲学を純化させ過ぎて、身動きが取れなくなり自慢の製品が失敗すればすぐに廃業の危機を迎える。同じように自動車ファンを熱狂させてきた世界の名門ブランドは次々とフェードアウトしていったし、フェラーリもポルシェも「寄らば大樹の影」といった現状。その一方で世界の10大自動車グループの内、4つが日系メーカーなのだからさ・・・。

  カローラアクシオは脈々と続くトヨタの名シリーズ「カローラ」を受け継ぐ、日本専売の小型セダン。現行モデルは2012年にFMCのもので、当時はカローラ史上最悪の失敗作とまで言われるほどメディアの風当たりは強く、全国数十万のカローラ愛好家のボルテージはだだ下がり・・・。初動から全くさえない状況が続いたが、翌年に待望のHVが追加され突如として息を吹き返した。アクア・プリウスというトヨタの2枚看板のに割って入りそうな勢いなのは、ワゴンのカローラフィールダーHVが好評だからで、アクシオ自体はそれほど台数は出ていない模様。

  5ナンバーなのにレガシィに似て上のクラスのクルマに見えるフィールダーに対して、アクシオは・・・分かる人には分かるデザイン。アリかナシかで言えば「ナシではない」つまり「アリ」なんじゃないかと思う。とりあえず各部に隙が見られるから、評論家にしゃべらせれば、ダメ出しの材料には事欠かないのだけど、車両価格やこのクルマの主な用途を考えた時に賢明な人ならば、その指摘がそれほど有効ではないことに気がつく。

  FMCから1年あまりが経ち、改めてこの現行アクシオを見てみると、思いのほかカワイイ。世間ではヴェゼルやルーテシアなどオシャレなコンパクトモデルがヒットしてけれども、そんな流行のど真ん中にいるクルマを買おうって思わない人もたくさんいると思う。ヴェゼルやルーテシアは確かに良く出来たデザインだけれども、このアクシオだって負けていない。アラの見えるトヨタデザインがどこかクラシカルなスパイスになっていていい味を出している。もはや絶滅した5ナンバーセダンの特徴を少しずつ受け継いだような控えめで上品な出で立ち。

  トヨタがこのクルマへのHVを1年遅らせた理由は、従来のカローラユーザーにも使いやすいHVを目指してアクアのシステムを改良するのにやや時間がかかったというものらしい。当初はカローラ店でのみ販売するモデルにHV化は認められないという理由が広まっていたが、それは2012年よりも前の段階での先代カローラへのHV導入要請での話だったようだ。とにかく、アクアやプリウスと比べて加速が滑らかで、マツダアクセラHVのような後発HVとしての進化を遂げている。

  カローラ、プレミオ、マークX、クラウン。一部は中国でノックダウンがされているが、現行モデルではトヨタの国内専売4兄弟。ここまで他車がグローバルに振ってきて、内装をみるだけでは、マツダだかスバルだか分からないし、何となく日本的価値観が奪われていると感じる最近のクルマの中で、この4車の存在感は独特だ。マツダやスバルに乗っている人には運転がつまらなく感じるだろうけれども、乗り心地ならば確実にトヨタが上だ。マツダやスバルはグローバルにクルマを作り好調だが、彼らが必ずしも正義というわけではない。刺激あるドライビングフィールという意味でBMWやポルシェに近いポジションを取っているに過ぎない。

  新型Cクラスは軽量化と乗り心地を両方を追求したが、その方向性の先にいるクルマはなんと現行マークXだ。マセラティ・ギブリは世界中でマセラティシェアを3〜4倍へと拡大しつつあるが、このクルマが目指したのはどうやらクラウンというのが専らの評判だ。これこそがトヨタの隠された本当の実力。プレミオやカローラにも「トヨタ国内専売」というブランドが息づいているはず。実家にやってきたプレミオ1.5Lはとても苦い印象だったけれども、もっと長時間のインプレッションで印象が変わるのかな。次のモデルに期待したい。


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↓カローラやプレミオで一番困るのがオーディオ。マーズヴォルタを爆音でかけるしか救いようがない。

2014年2月24日月曜日

アウトランダーPHEV 「本当に豊かな人が乗るクルマ」

  本当の意味で現在海外で高く評価されている日本車って何でしょうか?「GT-R」「ランエボ」「86」「ランクル」「キャッシュカイ」辺りが有力な気がします。アコードやカムリ、カローラは確かに台数は多いけど海外メーカーがムキになってコピーしてくる様子もあまりないし、トヨタやホンダの価格競争に必死な姿「TPP即加盟!」が目に浮かびます。

  日本市場ではさんざん高飛車にドイツメーカーがクルマを売りつけてきているのだから、日本車も海外市場で熱烈歓迎!を受けるようなクルマがほしいものです。欧州市場で「すげぇ」と言われるようなクルマを日本メーカーが作るのは、走行環境の違いからほぼ不可能といわれてきたそうですが、最近では欧州も日本並みの平均速度で走るようになって、何の前触れもなく日本のマイナーな車種がブレークするのだとか。デュアリス(キャッシュカイ)が大ヒットと聞いてピンときませんでしたが、改めて見ると全高が低く抑えられていて、なかなかのフォルムなんですよね。欧州でヒットという先入観のせいかも?

  三菱は最近のモーターショーでは専らSUVのみを出品するようになりました。これからの時代はSUV以外は開発する意義はない!というかなり極端な戦略を採っている様子です。イギリスやドイツでここ10年で発売された文献を参考にすると、オフロード性能に定評があるSUVブランドは、やはりと言うべきか「ランドローバー」「ジープ」「三菱」の御三家なんですね。日産エクストレイルやスバルフォレスターは必死で世界一と主張してますが、まだまだロシアや北欧など局地的な人気みたいです。つまり三菱のSUVは他の「にわか」とは意味合いが違うらしいのです。SUVだけ作っておけばいいスーパーブランド?

  日産の開発者がかつて語っていましたが、日本車の海外でのブランド力は性能の割に低い。それはもう不当と言っていいくらいに低いのだとか。その原因は日本メーカーがブランド力を高めようとする努力が出来ていないからで、欧州メーカーは車格やコンセプトを大筋で決めたら20年くらいのスパンをかけて独自の味を作り上げるのに、日本メーカーはちょっと不人気になるとすぐに車種を廃止し全く別のクルマを変わりに出している・・・。スポーツカーブーム、ワゴンブーム、ミニバンブームと廻った果てに日本車の地位はどれほど高まったのか?

  SUVしか出品しない三菱の現状に違和感を感じる私(日本人)の方が間違っていたようです。ランドローバーやジープみたいなSUV専門メーカーの存在も正直言ってあまり理解できませんでした。トラックの車台にキャビン付けたクルマがなんで高級車になるの?私のような心の貧しい三流人間にはとても理解できない世界でした・・・。そんな愚かな私にもスゴさが理解できるクルマを三菱は作ってくれました。アウトランダーPHEV。さすがは「御三家」の看板車種・・・。これまでは三菱車の重厚感が「厚ぼったく」見えてしまっていましたが、改めて見てみるとヘッドライト周りは気品に満ちあふれていますね。

  PHEVが発売される前の2.4Lガソリンで走るアウトランダーはPSAグループにOEMされていました。現在はRVRベースの新型に切り替わったようですが、今もなお岡山県でプジョーやシトロエンのクルマを作っています。プジョーもシトロエンも独自のテイストを保持していまも個性的なクルマを作るメーカーです。そういう連中の琴線に触れた「日本車」が現れたというだけでなんだか嬉しいじゃないですか? かつての不祥事の影響で「三菱ブランド」と聞くと多くの日本人が「血相」を変えて拒否反応を示す風潮を今も感じることがありますが、世間の冷ややかな視線を優雅にスルーしてアウトランダーPHEVを楽しむのもいいですね。


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2014年2月17日月曜日

マークX 「200万円台で楽しく走るクルマあります」

  トヨタの下世話なCMシリーズに完全に脚を引っ張られた可哀相なクルマでした・・・。あの50歳くらいのオッサンが不倫してるCM見て、このクルマ欲しいと思う人がどれくらいいるのか? あれで若者ユーザーの息の根は完全に止まりました。いまでは街中で見かけるドライバーは退役されたおじいさんばかり。引退後のクルマという意味ではドイツにおけるBMW3シリーズみたいな役割を果たしています。しかし3シリーズはドイツでは学生などにも人気があるのに対し、マークXに乗って大学に行く日本の学生ってどれくらいいるの?

  ただ「CMが酷い」とか「老人しか乗ってない」というだけで、このコストパフォーマンス抜群のマークXを無視するのは、ちょっともったいない気がします。ネット掲示板などを見ていると決まり文句のように登場するのが、「アルティッツァを復活させろ」みたいな意見です。200万円台で中型FRセダンを作れってことなんですが、しかし冷静になって考えてみると完成するクルマはマークXと同じような設計になりそう。いまさらプレミオ/アリオンくらいのサイズのFRセダンを作られても、現在ではもう「狭過ぎる」で不人気のまま終了してしまいそうです。

  さてトヨタはこのマークXも次はカムリと統合されてFFセダンになってしまうと言われていますが、実は現在のセダン市場はマークXサイズとカムリサイズの間にかなり大きな嗜好の差が表れていると考えられています。カムリ、アテンザ、アコードといったFFセダンは車内の広さにアドバンテージがあるので、クラウンと同じ大きさにすることでクラウンよりはるかにゆったりしたスペースが確保して売りとしています。一方でドライビングフィールと旋回半径の狭さが売りのFRセダンは、現行マークXのサイズに収束していて、下手な大型化で小回りが利くというFRの特性を失いたくないという意図が見えます。

  同クラスのセダンが次々とFMCを迎えて行く中で、今や現行モデルでは最古参のはずの2代目マークXですが、最新モデルのメルセデスCクラスがほぼマークXと同じサイズのFRとして出てくるわけですから、とても理にかなったコンセプトを当初から持っていたことがわかります。なぜFMCからだいぶ経つマークXが今も理想のサイズとして君臨しているのか?それはトヨタ得意の「最強マーケティング」に理由があります。

  トヨタのマーケティングは世界一優秀で、ライバルメーカーのどのクルマが今後それぞれの市場で売れるかどうかをほぼ正確に見通せるようです。よってライバルの売れるクルマを見つけ出してそのコンセプトをパクることで、トヨタのクルマは競争力を持ちますしその営業力でライバルを突き放します。マークXに関しても某国内メーカーのセダンを初代、2代目と完全にサイズをコピーして発売しています。全長×全幅×全高の全てが見事に一致しているのでわかると思います。2度ともにターゲット車がFMCをして1年後にマークXもFMCをしています。

  この作戦の意図は、ある購入予定者がライバルのセダンを検討したときに威力を発揮します。この中堅メーカーのクルマの比較対象としてトヨタが選ばれる可能性は高いでしょう。200万円台の本体価格から当然にリストアップされるのが、トヨペットのマークXです。デザインや雰囲気はいくらか異なるけど、ボディサイズを比べたら全く同じであり、選考の焦点は駆動方式はFFかFRか?エンジンは直4かV6か?の違いに集約されていきます。

  実際にマークXにターゲットにされたクルマはデビューから7年でグローバル累計200万台を売り上げた世界的に有名なクルマです。しかしなぜか日本ではマイナー存在でしかありません。日本での販売が大きく伸びなかった理由は、完全にマークXに吸い取られた結果だと言えます。しかしこのクルマはマークXが居ない日本以外の地域では着実に成功しました。そのあらゆるスペックはトヨタのマーケティングが読んだ通り、このクラスのスタンダードになりました。そして今度はマークXにそっくりのサイズの輸入車が日本にやってくるわけです。ドイツで発売していないマークXなのですが、メルセデスCやBMW3とサイズが一致してしまうのです。

  
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2014年2月10日月曜日

ホンダ・ヴェゼル「日本車繁栄の象徴」

  ちょっと乱暴な言い方ですが、実用車レベルでの「日本車」の性能は間違いなく世界最良と言い切っていいと思います。日本人は一般的に自動車産業の親和性は非常に高いと思いますし、なによりとても優秀な人材が自動車メーカーへと集まっています。クルマの信頼性という面でも、乗り心地などの感覚的な面でも突き詰めれば、日本がもっとも優秀な結果を出していると言えます。

  それでも自動車の専門家を自認するような人々が書くレビュー(プロのレビュー)を読むと、小学生でも分かる「日本車が最高」という常識が間違っているのか思うような「???」な感想を持つ時がたまにあります。「常識」という言葉を楯に話を進めるのもバカっぽいので・・・、それでは日本で販売されているどのクルマが実際にドイツ車や韓国車よりも明確に下回るのか?と考えると、少なくとも日本車が輸入車ユーザーにボロクソに言われるような決定的な事柄なんてそれほど見当たりません。

  全てはかつて確実に存在した日本と欧州の使用環境の差がそのままクルマ作りに反映されて、その差異を極めて恣意的な視点で比べた時に日本車が分が悪いことも起こるのでしょう。しかしカローラやプリウスをなんでわざわざ欧州車と比べなきゃいけないのか?という素朴な疑問が湧いてきます。そういう土俵に日本車を挙げるならば、欧州市場を制圧しようと意気込む、かつての「三菱デボネア」、今の「マツダアテンザ」「日産GT-R」といった野心的なクルマだけでいいのではという気がします。欧州向けのワゴンを用意しないレクサスのクルマですら安易に欧州車と比較するのはお門違いだと思います。

  そして何よりもクレイジーな事実は、BMWやメルセデスが日本に近い「成熟市場」向けに日本車に擦り寄ったクルマ作りを始めていることです。現行のBMW1や3シリーズはもはや日本車と同じ味付けといってもいいくらいです。かつてのBMW車の良さ(味わい)を欲するユーザーには、ディーラーから必ず「Mスポ」というオプションを奨められます。そして欧州メーカーがいま必死になって開発しているのが日本流のミニバンだったりします。

  アウトバーンを200km/hで走る必要が欧州でもほとんどなくなってきて、日本と同じように背が高い実用的なクルマが増えているという事情が背景にあります。BMWもメルセデスも今後日本車が得意なミニバンやエコカーを片っ端からパクっていくはずです。おそらく欧州市場にホンダが日本で絶賛発売中の「Nワン」や「Nボックス」といった軽自動車を持っていけば、彼の地の人々は泣いて喜ぶのではないかという気がします。後席のシートが自由に動くなんてクルマはほとんど無いでしょうから・・・。

  BMWやメルセデスの動向から考えるに日本メーカーの正当性がハッキリと証明されてめでたしめでたし!なのですが、1980年代から絶えず日本メーカーは既に孤高の道を突き進んでいて、その目指す先はドイツ車や韓国車などではなく、他でもないライバルの日本車なわけです。特にトヨタとホンダはお互いに創業以来ほかの自動車メーカーの傘下になったことがない「純血種」であり、独自の経営方針に絶対の自信を持つメーカー同士の「つば迫り合い」には鬼気迫るものがあります。お互いに絶えず相手のクルマを細かく分析し、相手の狙いを先読みして出し抜こうと激しい情報戦を繰り広げています。フィットHVとアクアの燃費対決などはもはや茶番に過ぎず、乗り心地を無視すれば50km/Lくらいは余裕なんだとか・・・。

  日本市場をハイブリッドで埋め尽くしたといっていいトヨタとホンダの2000年代の戦いの第1ラウンドは終結し、ハイブリッドが常識になった市場での第2ラウンドが始まったところです。蛇足ですが、200万円台のクルマにHVを積むという世界最先端の土俵にドイツメーカーが自力で立つことは不可能でしょう。第1ラウンドで完勝したトヨタにはやや駒不足な感じがあります。復讐に燃えるホンダが優れた商品力を発揮することは規定路線だったかもしれません。そんなホンダのもっとも強力な1台がこのヴェゼルというわけです。

  あえてちょっとアレな書き方をすると、「ヴェゼルは日本人の良識の証」といったところでしょうか? SUVというパッケージは世界中で大ヒットしていますが、もともとは地雷や爆弾テロへの耐性を求めるVIPの要求で作られたという経緯があります。もちろん世界に広まった汎用SUVにはそんな性能はなく、トラックと車台と共用できるという生産上の合理性がその普及の原動力だったと言えます。道路事情が極めて悪い地域では走破性が大変重宝されるわけですが、道路管理が行き届いた日本に近い環境では川を渡る性能なんて要らないわけです。ルノーの支援を受ける前の日産は、エクストレイルというたった1台のクルマの為に川を渡る技術を極めるなど不合理な仕事に血道を上げていたと、経営再建に取り組んだ担当者が自嘲気味に語っています。

  鉄道も高速道路も整備された日本でSUVに乗る意義とは何なのか? あえて納得いく答えを出すとするなら、JRの電車に乗るより箱根登山鉄道の電車に乗る方がドキドキする感覚に近いかもしれません。いや2階建ての列車の展望の良さに近いのかも。まあ程度の差はあれどもこの感覚は肯定すべきだと思います。ただし本格SUVには多くのネガティブな要素も同時にあるわけです。輸入車のSUVを調べれば分かりますが、1700kgといった高級車並みの重量を誇るものがほとんどです。車重は燃費だけでなく、あらゆる部品の消耗を早めますし、安全な走行に大きな影響を与えます。

  そこでホンダはこのSUVのあり方に徹底的にメスを入れました。厳密に言うと先にアイディアを出したのは日産ではありますが・・・。とりあえず「軽量化」をして魅力を損なうことなく、SUVを安全で負担の少ないクルマにしました。ホンダ・ヴェゼルのパッケージを考えると、極めて理性的に考えられたクルマだと結論するしかないわけですが、200万円足らずのこの小型SUVにハイブリッドを仕込むという仕事をやり遂げたのが、世界でホンダが初なのです(スバルもHVをターボ代わりにしていますが・・・)。世界80以上の国でクルマが作られているそうですが、これまで誰もやろうとしないかったということに驚きすらあります。

  ホンダがさくっと示した理性に対して、ポ◯シェカ◯エンやB◯W X◯って一体何なの?といつも思います。ドイツ車ばかりを目の敵にしてもしょうがないですね。マ◯ダC◯5やト◯タハ◯アーってまだまだ新しいクルマなんですが、あまり先々のことを考えずに惰性で作ってしまった印象すらありますね。まあそれくらいにこのヴェゼルというクルマには正義が宿っています。カーメディアの評価は後手後手だったにも関わらず発売1ヶ月で3万3千台!これは日本のユーザーの賢さを示すものですし、台数にも納得です。かつてプリウスが示した日本車の圧倒的な先進性を引き継ぐ次世代の「スーパースター」が現れたといってもいいでしょう。


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