2014年2月24日月曜日

アウトランダーPHEV 「本当に豊かな人が乗るクルマ」

  本当の意味で現在海外で高く評価されている日本車って何でしょうか?「GT-R」「ランエボ」「86」「ランクル」「キャッシュカイ」辺りが有力な気がします。アコードやカムリ、カローラは確かに台数は多いけど海外メーカーがムキになってコピーしてくる様子もあまりないし、トヨタやホンダの価格競争に必死な姿「TPP即加盟!」が目に浮かびます。

  日本市場ではさんざん高飛車にドイツメーカーがクルマを売りつけてきているのだから、日本車も海外市場で熱烈歓迎!を受けるようなクルマがほしいものです。欧州市場で「すげぇ」と言われるようなクルマを日本メーカーが作るのは、走行環境の違いからほぼ不可能といわれてきたそうですが、最近では欧州も日本並みの平均速度で走るようになって、何の前触れもなく日本のマイナーな車種がブレークするのだとか。デュアリス(キャッシュカイ)が大ヒットと聞いてピンときませんでしたが、改めて見ると全高が低く抑えられていて、なかなかのフォルムなんですよね。欧州でヒットという先入観のせいかも?

  三菱は最近のモーターショーでは専らSUVのみを出品するようになりました。これからの時代はSUV以外は開発する意義はない!というかなり極端な戦略を採っている様子です。イギリスやドイツでここ10年で発売された文献を参考にすると、オフロード性能に定評があるSUVブランドは、やはりと言うべきか「ランドローバー」「ジープ」「三菱」の御三家なんですね。日産エクストレイルやスバルフォレスターは必死で世界一と主張してますが、まだまだロシアや北欧など局地的な人気みたいです。つまり三菱のSUVは他の「にわか」とは意味合いが違うらしいのです。SUVだけ作っておけばいいスーパーブランド?

  日産の開発者がかつて語っていましたが、日本車の海外でのブランド力は性能の割に低い。それはもう不当と言っていいくらいに低いのだとか。その原因は日本メーカーがブランド力を高めようとする努力が出来ていないからで、欧州メーカーは車格やコンセプトを大筋で決めたら20年くらいのスパンをかけて独自の味を作り上げるのに、日本メーカーはちょっと不人気になるとすぐに車種を廃止し全く別のクルマを変わりに出している・・・。スポーツカーブーム、ワゴンブーム、ミニバンブームと廻った果てに日本車の地位はどれほど高まったのか?

  SUVしか出品しない三菱の現状に違和感を感じる私(日本人)の方が間違っていたようです。ランドローバーやジープみたいなSUV専門メーカーの存在も正直言ってあまり理解できませんでした。トラックの車台にキャビン付けたクルマがなんで高級車になるの?私のような心の貧しい三流人間にはとても理解できない世界でした・・・。そんな愚かな私にもスゴさが理解できるクルマを三菱は作ってくれました。アウトランダーPHEV。さすがは「御三家」の看板車種・・・。これまでは三菱車の重厚感が「厚ぼったく」見えてしまっていましたが、改めて見てみるとヘッドライト周りは気品に満ちあふれていますね。

  PHEVが発売される前の2.4Lガソリンで走るアウトランダーはPSAグループにOEMされていました。現在はRVRベースの新型に切り替わったようですが、今もなお岡山県でプジョーやシトロエンのクルマを作っています。プジョーもシトロエンも独自のテイストを保持していまも個性的なクルマを作るメーカーです。そういう連中の琴線に触れた「日本車」が現れたというだけでなんだか嬉しいじゃないですか? かつての不祥事の影響で「三菱ブランド」と聞くと多くの日本人が「血相」を変えて拒否反応を示す風潮を今も感じることがありますが、世間の冷ややかな視線を優雅にスルーしてアウトランダーPHEVを楽しむのもいいですね。


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2014年2月17日月曜日

マークX 「200万円台で楽しく走るクルマあります」

  トヨタの下世話なCMシリーズに完全に脚を引っ張られた可哀相なクルマでした・・・。あの50歳くらいのオッサンが不倫してるCM見て、このクルマ欲しいと思う人がどれくらいいるのか? あれで若者ユーザーの息の根は完全に止まりました。いまでは街中で見かけるドライバーは退役されたおじいさんばかり。引退後のクルマという意味ではドイツにおけるBMW3シリーズみたいな役割を果たしています。しかし3シリーズはドイツでは学生などにも人気があるのに対し、マークXに乗って大学に行く日本の学生ってどれくらいいるの?

  ただ「CMが酷い」とか「老人しか乗ってない」というだけで、このコストパフォーマンス抜群のマークXを無視するのは、ちょっともったいない気がします。ネット掲示板などを見ていると決まり文句のように登場するのが、「アルティッツァを復活させろ」みたいな意見です。200万円台で中型FRセダンを作れってことなんですが、しかし冷静になって考えてみると完成するクルマはマークXと同じような設計になりそう。いまさらプレミオ/アリオンくらいのサイズのFRセダンを作られても、現在ではもう「狭過ぎる」で不人気のまま終了してしまいそうです。

  さてトヨタはこのマークXも次はカムリと統合されてFFセダンになってしまうと言われていますが、実は現在のセダン市場はマークXサイズとカムリサイズの間にかなり大きな嗜好の差が表れていると考えられています。カムリ、アテンザ、アコードといったFFセダンは車内の広さにアドバンテージがあるので、クラウンと同じ大きさにすることでクラウンよりはるかにゆったりしたスペースが確保して売りとしています。一方でドライビングフィールと旋回半径の狭さが売りのFRセダンは、現行マークXのサイズに収束していて、下手な大型化で小回りが利くというFRの特性を失いたくないという意図が見えます。

  同クラスのセダンが次々とFMCを迎えて行く中で、今や現行モデルでは最古参のはずの2代目マークXですが、最新モデルのメルセデスCクラスがほぼマークXと同じサイズのFRとして出てくるわけですから、とても理にかなったコンセプトを当初から持っていたことがわかります。なぜFMCからだいぶ経つマークXが今も理想のサイズとして君臨しているのか?それはトヨタ得意の「最強マーケティング」に理由があります。

  トヨタのマーケティングは世界一優秀で、ライバルメーカーのどのクルマが今後それぞれの市場で売れるかどうかをほぼ正確に見通せるようです。よってライバルの売れるクルマを見つけ出してそのコンセプトをパクることで、トヨタのクルマは競争力を持ちますしその営業力でライバルを突き放します。マークXに関しても某国内メーカーのセダンを初代、2代目と完全にサイズをコピーして発売しています。全長×全幅×全高の全てが見事に一致しているのでわかると思います。2度ともにターゲット車がFMCをして1年後にマークXもFMCをしています。

  この作戦の意図は、ある購入予定者がライバルのセダンを検討したときに威力を発揮します。この中堅メーカーのクルマの比較対象としてトヨタが選ばれる可能性は高いでしょう。200万円台の本体価格から当然にリストアップされるのが、トヨペットのマークXです。デザインや雰囲気はいくらか異なるけど、ボディサイズを比べたら全く同じであり、選考の焦点は駆動方式はFFかFRか?エンジンは直4かV6か?の違いに集約されていきます。

  実際にマークXにターゲットにされたクルマはデビューから7年でグローバル累計200万台を売り上げた世界的に有名なクルマです。しかしなぜか日本ではマイナー存在でしかありません。日本での販売が大きく伸びなかった理由は、完全にマークXに吸い取られた結果だと言えます。しかしこのクルマはマークXが居ない日本以外の地域では着実に成功しました。そのあらゆるスペックはトヨタのマーケティングが読んだ通り、このクラスのスタンダードになりました。そして今度はマークXにそっくりのサイズの輸入車が日本にやってくるわけです。ドイツで発売していないマークXなのですが、メルセデスCやBMW3とサイズが一致してしまうのです。

  
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2014年2月10日月曜日

ホンダ・ヴェゼル「日本車繁栄の象徴」

  ちょっと乱暴な言い方ですが、実用車レベルでの「日本車」の性能は間違いなく世界最良と言い切っていいと思います。日本人は一般的に自動車産業の親和性は非常に高いと思いますし、なによりとても優秀な人材が自動車メーカーへと集まっています。クルマの信頼性という面でも、乗り心地などの感覚的な面でも突き詰めれば、日本がもっとも優秀な結果を出していると言えます。

  それでも自動車の専門家を自認するような人々が書くレビュー(プロのレビュー)を読むと、小学生でも分かる「日本車が最高」という常識が間違っているのか思うような「???」な感想を持つ時がたまにあります。「常識」という言葉を楯に話を進めるのもバカっぽいので・・・、それでは日本で販売されているどのクルマが実際にドイツ車や韓国車よりも明確に下回るのか?と考えると、少なくとも日本車が輸入車ユーザーにボロクソに言われるような決定的な事柄なんてそれほど見当たりません。

  全てはかつて確実に存在した日本と欧州の使用環境の差がそのままクルマ作りに反映されて、その差異を極めて恣意的な視点で比べた時に日本車が分が悪いことも起こるのでしょう。しかしカローラやプリウスをなんでわざわざ欧州車と比べなきゃいけないのか?という素朴な疑問が湧いてきます。そういう土俵に日本車を挙げるならば、欧州市場を制圧しようと意気込む、かつての「三菱デボネア」、今の「マツダアテンザ」「日産GT-R」といった野心的なクルマだけでいいのではという気がします。欧州向けのワゴンを用意しないレクサスのクルマですら安易に欧州車と比較するのはお門違いだと思います。

  そして何よりもクレイジーな事実は、BMWやメルセデスが日本に近い「成熟市場」向けに日本車に擦り寄ったクルマ作りを始めていることです。現行のBMW1や3シリーズはもはや日本車と同じ味付けといってもいいくらいです。かつてのBMW車の良さ(味わい)を欲するユーザーには、ディーラーから必ず「Mスポ」というオプションを奨められます。そして欧州メーカーがいま必死になって開発しているのが日本流のミニバンだったりします。

  アウトバーンを200km/hで走る必要が欧州でもほとんどなくなってきて、日本と同じように背が高い実用的なクルマが増えているという事情が背景にあります。BMWもメルセデスも今後日本車が得意なミニバンやエコカーを片っ端からパクっていくはずです。おそらく欧州市場にホンダが日本で絶賛発売中の「Nワン」や「Nボックス」といった軽自動車を持っていけば、彼の地の人々は泣いて喜ぶのではないかという気がします。後席のシートが自由に動くなんてクルマはほとんど無いでしょうから・・・。

  BMWやメルセデスの動向から考えるに日本メーカーの正当性がハッキリと証明されてめでたしめでたし!なのですが、1980年代から絶えず日本メーカーは既に孤高の道を突き進んでいて、その目指す先はドイツ車や韓国車などではなく、他でもないライバルの日本車なわけです。特にトヨタとホンダはお互いに創業以来ほかの自動車メーカーの傘下になったことがない「純血種」であり、独自の経営方針に絶対の自信を持つメーカー同士の「つば迫り合い」には鬼気迫るものがあります。お互いに絶えず相手のクルマを細かく分析し、相手の狙いを先読みして出し抜こうと激しい情報戦を繰り広げています。フィットHVとアクアの燃費対決などはもはや茶番に過ぎず、乗り心地を無視すれば50km/Lくらいは余裕なんだとか・・・。

  日本市場をハイブリッドで埋め尽くしたといっていいトヨタとホンダの2000年代の戦いの第1ラウンドは終結し、ハイブリッドが常識になった市場での第2ラウンドが始まったところです。蛇足ですが、200万円台のクルマにHVを積むという世界最先端の土俵にドイツメーカーが自力で立つことは不可能でしょう。第1ラウンドで完勝したトヨタにはやや駒不足な感じがあります。復讐に燃えるホンダが優れた商品力を発揮することは規定路線だったかもしれません。そんなホンダのもっとも強力な1台がこのヴェゼルというわけです。

  あえてちょっとアレな書き方をすると、「ヴェゼルは日本人の良識の証」といったところでしょうか? SUVというパッケージは世界中で大ヒットしていますが、もともとは地雷や爆弾テロへの耐性を求めるVIPの要求で作られたという経緯があります。もちろん世界に広まった汎用SUVにはそんな性能はなく、トラックと車台と共用できるという生産上の合理性がその普及の原動力だったと言えます。道路事情が極めて悪い地域では走破性が大変重宝されるわけですが、道路管理が行き届いた日本に近い環境では川を渡る性能なんて要らないわけです。ルノーの支援を受ける前の日産は、エクストレイルというたった1台のクルマの為に川を渡る技術を極めるなど不合理な仕事に血道を上げていたと、経営再建に取り組んだ担当者が自嘲気味に語っています。

  鉄道も高速道路も整備された日本でSUVに乗る意義とは何なのか? あえて納得いく答えを出すとするなら、JRの電車に乗るより箱根登山鉄道の電車に乗る方がドキドキする感覚に近いかもしれません。いや2階建ての列車の展望の良さに近いのかも。まあ程度の差はあれどもこの感覚は肯定すべきだと思います。ただし本格SUVには多くのネガティブな要素も同時にあるわけです。輸入車のSUVを調べれば分かりますが、1700kgといった高級車並みの重量を誇るものがほとんどです。車重は燃費だけでなく、あらゆる部品の消耗を早めますし、安全な走行に大きな影響を与えます。

  そこでホンダはこのSUVのあり方に徹底的にメスを入れました。厳密に言うと先にアイディアを出したのは日産ではありますが・・・。とりあえず「軽量化」をして魅力を損なうことなく、SUVを安全で負担の少ないクルマにしました。ホンダ・ヴェゼルのパッケージを考えると、極めて理性的に考えられたクルマだと結論するしかないわけですが、200万円足らずのこの小型SUVにハイブリッドを仕込むという仕事をやり遂げたのが、世界でホンダが初なのです(スバルもHVをターボ代わりにしていますが・・・)。世界80以上の国でクルマが作られているそうですが、これまで誰もやろうとしないかったということに驚きすらあります。

  ホンダがさくっと示した理性に対して、ポ◯シェカ◯エンやB◯W X◯って一体何なの?といつも思います。ドイツ車ばかりを目の敵にしてもしょうがないですね。マ◯ダC◯5やト◯タハ◯アーってまだまだ新しいクルマなんですが、あまり先々のことを考えずに惰性で作ってしまった印象すらありますね。まあそれくらいにこのヴェゼルというクルマには正義が宿っています。カーメディアの評価は後手後手だったにも関わらず発売1ヶ月で3万3千台!これは日本のユーザーの賢さを示すものですし、台数にも納得です。かつてプリウスが示した日本車の圧倒的な先進性を引き継ぐ次世代の「スーパースター」が現れたといってもいいでしょう。


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