2014年3月24日月曜日

マツダ・デミオ スポルト 「マツダはロードスターだけではない!」

  日本メーカーでは珍しく「乗り味」を重視すると言われるマツダ。実際は・・・特には特殊な構造をしているわけではないです。世界的なハンドリングマシン「ロードスター」は確かに基本設計からして「個性的」で、お手頃な価格ということもあり「日本車史上」に残る傑作車。これはあくまで「スポーツカー」としてマツダが理想を追求した結果であって、これ以外の普通車ラインナップには大した仕掛けはないです。

  最近では「法定装備」が増えてしまって、ロードスターでも公道車である以上は結構な重量になってしまいます。これにはマツダの開発者も相当に頭を悩ませているようで、次期NDロードスターはエンジンをダウンサイジングして、軽量化を目指さざるを得なくなったとか。マツダの乗り味の良さは「軽さ」に支えられていたわけで、現状ではどんどんとマツダにとっては悪い方向へとか設計環境は進んでいるわけです。

  そうなってくると俄然盛り上がってくるのが、マツダの最軽量普通車モデル「デミオ
」。ジュネーブモーターショーで発表された次期モデルのコンセプトもかなり注目を集めていましたが、マツダも「デミオ」のクラスに大きな将来性を感じている様子です。現行デミオにも「スポルト」というロードスターよりも100kg軽いスポーティなモデルがありまして、マツダを「ハンドリング」のブランドと割り切るならば、ロードスターとともに「2トップ」を形成する秘蔵っ子です。

  1.3Lのデミオと同じ車重に抑えられていながら、1.5L(113ps)の「ZY-VW」というエンジンは、スズキの小型車向け(K12B)のようなスクエア(ボアとストロークがほぼ同じ長さ)型が特徴で、日本の小型車向けエンジンとしてはかなりスポーティに噴け上がります。VWやプジョーの湿気た1.2L(基本的にやる気がない)とは違って、小型車で勝負しようというメーカーのプライドがそこにはあります。

  ちょっと横道それますが、マツダとスズキは小型車エンジンにやたらと手を加えるのが好きなブランドで、ガソリンエンジン車の燃費の頂点を狙えるのはこの2社とホンダに限られているのが現状です。豊富な予算でアトキンソンサイクル化を進め熱効率を重視するホンダ。既存技術の組み合わせ、特にインジェクター(燃料噴射装置)の改良で「燃焼効率」を重視する2社。マツダは「直噴」でスズキは「ツインインジェクター」。かつてフェラーリ288GTで実用化された技術が現行スイフト(ガソリン車燃費でフィット越え!)に使われています。

  現在の欧州ではA/Bセグが熱いわけですが、マツダもスズキもその中心的なブランドを形成しています。何よりデミオの技術を使った「フォード」とスイフトの技術を使った「オペル(GM)」がEU各国で覇権をめぐって争っているわけで、代理戦争のはずが全欧州を巻き込む大決戦になっています。つまりBMWやメルセデスにもクソみたいなパクリ車を生んだ「ロードスター」よりも、「デミオ」の方が欧州のさらに深いところにまで達していると言えるのでは? 

  いよいよフォード版デミオの「フィエスタ」が日本でも発売されますが、欧州誌のハンドリング評価では「A45AMG」に完勝(相手はAWDなのだから当たり前だが・・・)など前評判は上々なようですが、そもそもデミオ・スポルトの実力だって相当に高い!デミオとフィエスタおよそ50万円の価格差はデザイン等を考えても不当なレベルじゃないですか・・・。



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2014年3月17日月曜日

日産・ジュークターボ 「モリゾー社長を最も刺激した一台はこれでは?」

  最近の新型車を見ているとトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバル・スズキ・三菱・ダイハツ・・・みんな同じ方向を向いているようですね。自動車で喰ってきた人々は結局は皆同じようなことを考えるようになるのかな。どのメーカーも「遊び心」があるクルマをせっせと作るようになってきました。最近じゃ「遊び心」の押し売りみたいになってきて、生活の足として街中をウロウロするだけのお年寄りがジュークにちょこんと乗っている。いや全然変じゃないですよ・・・いいと思います。

  その内にスズキ・ハスラーを乗り回すお年寄りが、日本中で車中泊を繰り返すようになるのでしょうか? そういえばRCZやシロッコに乗っているのは高齢者が多いような気がします。自動車メーカーが考える「遊び心」って結局は高齢者を主に捉えていますね。私も痛いほどに身に覚えがあるのですが、若い人間ほど「虚勢」を張りたがるわけで、メルセデスCLにあこがれつつ中古のセルシオに乗りたがる・・・。

  そんな「遊び心」の先駆者的存在なのが日産ジュークですかね。このクルマの2010年のデビューを皮切りに日本メーカー全体がガラガラと変わってきましたね。マツダなんかがその後は注目されましたけど、どうやらこの頃に最も積極的に社内を改革し、震災が起こっても優秀なスタッフに支えられていち早く生産体制と整えるなど、日産の自動車製造業としての姿勢は他のメーカーを大きく凌いでいたようです。

  この日産の動きに呼応・追従して各社ともに経営陣の交代が行われて、「遊び心」だとか言い出し始め、さすがというべきかホンダもマツダもスバルもなかなか骨太なヴィジョンを掲げて見事に復活しました。出すクルマが次々にヒットする100発100中状態がいつまで続くかわかりませんが、2000年代の終わり頃には「ヒュンダイにまとめて抜かされる」と揶揄されていた日本の自動車メーカーは目下のところグローバルでも絶好調です。

  日産はこのジュークの成功で2年ほど前から欧州とロシアでのシェアを押し上げました。「個性的な外装」と「センスある内装」指先にまで神経が行き届いている感覚が日本の大衆車にはこれまで無かったポイントなのかなと思います。「遊び心」という言葉が安易に使われますが、ジュークが見せたような「コンセプト」への飽くなき執念をどこまで妥協無く貫き通すか?というクラフトマンシップの限界に挑む「厳しい世界」なんだということが解ります。

  今後、この原則を履き違えた「くだらない遊び心」のクルマが登場するかもしれないですが、そんな愚かなメーカー第一号はどこになるのでしょうか?



  ↓ジュークの兄弟車が日本上陸!「遊び心」コンセプト・・・完璧です。




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2014年3月10日月曜日

マークX G's 「トヨペットのエースは不滅だ!」

  トヨタの系列販売店の中で一番の苦境にあると言われているのがトヨペット。東京トヨペットはクラウンの取り扱いが認められていますが、その他のトヨペット店はフラッグシップモデルのマークXにハイブリッドを設定するようトヨタ本社には何度も陳情が行われたようですが、なかなか実現しないまま今に至っています。トヨペット店も2014年になって大人気SUVのハリアーが復活して息を吹き返しつつあるようです。

  マークXは「お手軽なFRの高級車」といったクルマなんですが、お手軽でお得なのだから人気が出る!というわけにはいかないようです。「お手軽だったら高級車じゃないだろ!」とクルマのことよくわかっていない人々が、やたらめったらと批判をするのでクルマに詳しい人ならばマークXの悪口を何度と無く聞いたことでしょう。私の考えとしてはBMW3シリーズやメルセデスCクラスが高級車に分類されるならば、マークXも当然に高級車で良いと思います。

  このクルマの最大の弱点は日本国内専用として開発されていることです。日本専用なんてスペシャルな普通車を今どき作っているメーカーなんてトヨタ以外にはほとんどないわけですが、どうもグローバルで評価されているクルマの方が説得力があるという、なかなか無茶苦茶な理論でマークXやクラウンは厳しい評価が目に付きます。国内専用車には当然ながら250km/hでアウトバーンを巡航させる性能など要求されません。よってマークXやクラウンはその速度を想定したクルマ作りをせず、もっと日本の実用域での快適性に力点を置いています。250km/h超での高速安定性と実用域での快適性はクルマ作りにおいてトレードオフの関係にあるわけです。

  気がつけば、国内市場でマークXのライバルとなるクルマはドイツ車を始めとする輸入車、スカイライン、アコード、レガシィ、アテンザとどれも高速安定性を追求したクルマばかりになりました。ただしこの中でどれが高級車として相応しい性能を有しているかというと、「乗り心地」「静粛性」の観点ではマークXが最も優れています。これはこの2点では絶対に負けないというトヨタの伝統が生きているからです。トヨタのクラウンは1955年から作られる長い歴史を持ったモデルですが、この積み上げたFMCの果てにトヨタは世界でもっとも静かなセダンを作り上げます。

  このクラウンのノウハウを詰め込んだセルシオを旗艦としてアメリカでレクサスを創設します。当時8気筒のセルシオが、12気筒を積むメルセデスやBMWを超える静粛性を発揮し世界を驚かせました。「静かな国・日本」からやってきた驚異のスーパーサルーンはアメリカの高級車市場を席巻しました。トヨタの12気筒センチュリーはさらに静かに走ったそうです。

  よくドイツ車に乗っている人が、「ボディが堅牢で、中はびっくりするぐらい静かだよ」とか言っています。確かに100万円そこそこの日本車よりも静かかもしれませんが、決してメルセデスやBMWは「静かな」メーカーではありません。実際にBMW3シリーズとマークXを乗り比べれば、「乗り心地」も「静粛性」もハッキリとトヨタが上回っています。それでも評論家がBMWを強調するポイントとしては、高速旋回への対応としてサス剛性が高い(乗り心地は悪くなる)ことと、ハンドリングの精度、ブレーキやアクセルのレスポンスが良いといった点です。

  実際に3シリーズとマークXを設計レベルから比較すれば、トヨタの採用しているシャシーの方がD/Eセグ高級車向けであらゆる点で構造上の優位性を持っています。3シリーズのシャシーはC/Dセグ向けのBMW・L7プラットフォームで、現行の3シリーズのボディが上限ギリギリの設計です。簡単に言うと3シリーズのライバルは実はマークXではなく、北米や欧州に輸出されているカローラなのです。「カローラクラス」のシャシーに高級車調のボディを載せた3シリーズと、「クラウンクラス」のシャシーを流用してやや小振りのキャビンを付けたマークXが同じ土俵で比べられているわけです。

  そして評論家の皆様は、「乗り心地」ではなく「乗り味」を引き合いに出して、この両者を比べます。それはトヨタがマークXを「スポーティセダン」と言って憚らないからなのですが、林道をマークXとカローラで同じエンジン積んで走ったらどっちが楽しいか?と比べているに過ぎません。小型なボディにパワフルなエンジンを載せて楽しいクルマを作るという欧州車の伝統を否定するつもりはありませんが、それを高級車らしさと誤解していらっしゃる方々が多いのが残念です。

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「BMW3とマークXの比較動画vol.2」へのリンク
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2014年3月3日月曜日

カローラアクシオ 「ちょっとマイナーになって乗り頃」

  日本車は流行に敏感だ。いや敏感すぎるのかな? クルマのコンセプトを決めたらそれを育てる努力をせずに、アイディアの使い捨てをしていると言われても仕方がないほどに移ろい続けている。逆にマツダやスバルのようないわゆる「かぶれ」ブランドは、クルマ作りの哲学を純化させ過ぎて、身動きが取れなくなり自慢の製品が失敗すればすぐに廃業の危機を迎える。同じように自動車ファンを熱狂させてきた世界の名門ブランドは次々とフェードアウトしていったし、フェラーリもポルシェも「寄らば大樹の影」といった現状。その一方で世界の10大自動車グループの内、4つが日系メーカーなのだからさ・・・。

  カローラアクシオは脈々と続くトヨタの名シリーズ「カローラ」を受け継ぐ、日本専売の小型セダン。現行モデルは2012年にFMCのもので、当時はカローラ史上最悪の失敗作とまで言われるほどメディアの風当たりは強く、全国数十万のカローラ愛好家のボルテージはだだ下がり・・・。初動から全くさえない状況が続いたが、翌年に待望のHVが追加され突如として息を吹き返した。アクア・プリウスというトヨタの2枚看板のに割って入りそうな勢いなのは、ワゴンのカローラフィールダーHVが好評だからで、アクシオ自体はそれほど台数は出ていない模様。

  5ナンバーなのにレガシィに似て上のクラスのクルマに見えるフィールダーに対して、アクシオは・・・分かる人には分かるデザイン。アリかナシかで言えば「ナシではない」つまり「アリ」なんじゃないかと思う。とりあえず各部に隙が見られるから、評論家にしゃべらせれば、ダメ出しの材料には事欠かないのだけど、車両価格やこのクルマの主な用途を考えた時に賢明な人ならば、その指摘がそれほど有効ではないことに気がつく。

  FMCから1年あまりが経ち、改めてこの現行アクシオを見てみると、思いのほかカワイイ。世間ではヴェゼルやルーテシアなどオシャレなコンパクトモデルがヒットしてけれども、そんな流行のど真ん中にいるクルマを買おうって思わない人もたくさんいると思う。ヴェゼルやルーテシアは確かに良く出来たデザインだけれども、このアクシオだって負けていない。アラの見えるトヨタデザインがどこかクラシカルなスパイスになっていていい味を出している。もはや絶滅した5ナンバーセダンの特徴を少しずつ受け継いだような控えめで上品な出で立ち。

  トヨタがこのクルマへのHVを1年遅らせた理由は、従来のカローラユーザーにも使いやすいHVを目指してアクアのシステムを改良するのにやや時間がかかったというものらしい。当初はカローラ店でのみ販売するモデルにHV化は認められないという理由が広まっていたが、それは2012年よりも前の段階での先代カローラへのHV導入要請での話だったようだ。とにかく、アクアやプリウスと比べて加速が滑らかで、マツダアクセラHVのような後発HVとしての進化を遂げている。

  カローラ、プレミオ、マークX、クラウン。一部は中国でノックダウンがされているが、現行モデルではトヨタの国内専売4兄弟。ここまで他車がグローバルに振ってきて、内装をみるだけでは、マツダだかスバルだか分からないし、何となく日本的価値観が奪われていると感じる最近のクルマの中で、この4車の存在感は独特だ。マツダやスバルに乗っている人には運転がつまらなく感じるだろうけれども、乗り心地ならば確実にトヨタが上だ。マツダやスバルはグローバルにクルマを作り好調だが、彼らが必ずしも正義というわけではない。刺激あるドライビングフィールという意味でBMWやポルシェに近いポジションを取っているに過ぎない。

  新型Cクラスは軽量化と乗り心地を両方を追求したが、その方向性の先にいるクルマはなんと現行マークXだ。マセラティ・ギブリは世界中でマセラティシェアを3〜4倍へと拡大しつつあるが、このクルマが目指したのはどうやらクラウンというのが専らの評判だ。これこそがトヨタの隠された本当の実力。プレミオやカローラにも「トヨタ国内専売」というブランドが息づいているはず。実家にやってきたプレミオ1.5Lはとても苦い印象だったけれども、もっと長時間のインプレッションで印象が変わるのかな。次のモデルに期待したい。


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↓カローラやプレミオで一番困るのがオーディオ。マーズヴォルタを爆音でかけるしか救いようがない。