2014年4月12日土曜日

日産ノート 「小型車の流儀とNISSANの誇り」

  現行の日産ノートが登場したときは、日産に対しての「憎悪」と「嘲笑」の気持ちがありました。「なんか日産ってズレてるよな・・・」。これが率直過ぎる感想で、日産は小型車を「ナメてるのでは?」という色眼鏡もあって、どうせ新興国向けのクルマを日本で適当に売りさばきたいだけじゃないの?って完全に懐疑な視線。そもそもCMにジャニーズタレントを起用するなんて・・・完全にユーザーを馬鹿にしているとしか思えない!

  トヨタやホンダが巨額の開発費をかけて、世界最先端のHV技術で争っている国内Bセグ市場に、東南アジアで売ってそうな1.2Lガソリンエンジンで今さらに参入って・・・。どれだけやる気ないんだよ!って雑誌にも叩かれてました。普段はカーメディア嫌いなのですが、この時ばかりは「そうだ!そうだ!」って思わず同調しましたね・・・。非HVだとしてもVWゴルフみたいに静音・制振設計だというならまだ受容する余地がありますが、明らかにマーチ/ティーダ/ラティオといったラインを後継する小綺麗な新型車でしかなく、しかも「うるさい、燃費も良くない、価格も高い」って一体誰得だよ!?

  さてここまで来てひとつの疑問が・・・。ド素人の私でも「最低のクルマ」で試乗する価値もないと思ってしまうようなモデルを、世界のトップメーカーである日産がわざわざ投入するなんてことがあるのだろうか? アクア登場以降、完全にマイナーな存在になったヴィッツの1.3Lモデルを、そのまま「なぞった」ようなクルマを今さらのように出してくるものだろうか? 今や軽自動車に押されて無個性なBセグなんてどんどん淘汰されている時代なのに・・・。案の定、日産ユーザーからもラティオを残して!という声が・・・。

  どうせ欧州・中国・東南アジアで使い倒すためのルノーと共通の1.2Lなんだろう!と完全に日産で最近顕著に見られる経営合理化のストイックな姿勢から想像していましたが、去年の暮れになって「自動車ガイドブック(日刊自動車新聞)」を何気なく見ていると、ノートの1.2LエンジンはNAとスーパーチャージャーでは異なっていて、日本で売られているマーチのものとも、欧州で売られているルノー車のものとも違うことが判明・・・。

  経営合理化を強引に押し進めているイメージがあったルノー日産グループですが、1.2Lエンジンだけでも複数のバージョンがあり、しかも3気筒も4気筒もありその市場の道路環境によって細かく作り分けているとは・・・思いもよりませんでした。よくよく考えるとこれは結構スゴいことなんですよね。日本ではおなじみのトヨタやホンダの小型車向けHVは走行環境の違う欧州ではなかなか受け入れられず低迷。北米ではそこそこ売れていますが、カムリやアコードの売れ行きに比べればまだまだマイナーな存在。小型車そのものが北米では市民権を得ていないようですが・・・。

  そして欧州王者のVWの代表的小型車エンジンである「1.2/1.4Lガソリンターボ(TSI)」も受け入れられている地域はとても限定的なんですよね。欧州では10ほどあるパワーユニットの一部でしかなく、そもそもディーゼル(GDI)が半数を占めるわけですから・・・。確かに小排気量なのに高速燃費が視野に入っている点は評価できますが、日本の都市部の混雑道路を走るのには全く向かないですし、北米では「さっぱり」であまりの不人気っぷりにゴルフ7以降は廃止されてしまったくらいです。

  そういった現状が日本のカーメディアによってねじ曲げられて伝えられていて、その一番の被害者が日産なのかもしれません。なんだかんだで一番マジメにやっているのは日産では?その緻密に作り分けた1.2Lエンジンはどれもエンジンとしては世界最高水準です。そして主なものは全て日本で乗る事ができます。ルノールーテシア/キャプチャーに使われる「H5ft」は4気筒ターボで燃費以上に「走り」が絶賛されているエンジン。日産ノートのNA及びマーチで使われるのが「H12DE」で3気筒エンジンでこれは新興国向けの廉価モデル用ですね(ノートのNAはもっと安くてもいいのでは?)。

  そしてノートのスーパーチャージャー仕様に使われるのが「H12DDR」という3気筒エンジンでスペック上はボア×ストロークが「H12DE」と同じなので共通と思いきや、「直噴化」「ミラーサイクル化」がされていて、ホンダの新型フィットがトヨタ越えを狙って開発した新型HVと同じ方向性の改良が施されています。「何でスパチャー?」というのも日産の周到なシュミレーションによるもので、バッテリー搭載や熱処理など小型車にはハードルが高いHVよりもシンプルな設計を目指すのが得策と考えたようです。つまりホンダは「ミラーサイクル+HV」のところを日産は「ミラーサイクル+スパチャー」で熱効率の極限を目指したということです。

  4気筒の「H5ft」はターボ過給で、3気筒の「H12DDR」はスパチャー。この辺りの芸の細かさにエンジン技術における日産のプライドが滲んでいます。確かにハイブリッド技術は日本の混雑道路を想定すると素晴らしいものですが、それ一辺倒になってしまうのも考えものだ!という達観の境地に達した日産の極めて「大人」な提案が、この「ノート」のスーパーチャージャーなんだなと思いますね。いやはや愚かな勘違いをしていた自分が恥ずかしい限りです。



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2014年4月2日水曜日

ホンダ・ヴェゼル 「クルマ=アップル的ガジェットの時代へ・・・」

  アウディが昨年発売した「ゴルフ高級版」ことアウディA3の存在がほとんど忘れ去られている。ベース車のゴルフハイラインがライバル輸入車メーカーよりも高い価格設定なので、それよりもさらに高価なA3が敬遠されてしまうのも何となくわかります。アウディがA3を発売したときに強調したのが、「クルマの中でネットが使えます!」というシステム。どうもこれがクルマ好きには全くウケていないようで、複数の評論家が「もっと他にやることがあるだろう?」と辛辣な意見を投げかけていました。

  その一方で産経や東洋経済など「一般紙」のクルマ記事ではA3の先進性を称賛する声もありました。「アップルやグーグルのような発想でクルマが作られる時代」みたいなことを言ってましたが、これはなんかちょっと違う気する・・・というより「理解のレベル」がとても低いです。クルマに無線LANを設置すること自体は1980年代の「自動車電話」と同じレベルの発想です。もちろん運転中のネットって誰が考えても危ないですし・・・。アウディもマツダも「クルマのIT化」に関してはやってることは全然新しくないし「アップル的」でもない。そんなものに価値を見出す人のセンスは全く以てオカシイ!

  むしろアップル的な発想がクルマ作りに与える良い影響は、このホンダ「ヴェゼル」に感じることができます。自動車には「高級車」という概念が未だに存在しますが、アップルの製品「i-phone」や「mac book air」には特別に「高級」というイメージはありませんし、価格設定も極めて平凡な水準に押さえられています。ネット通販で買えば、「エイサー(パソコン大手の台湾メーカー)」とほぼ同スペックのものでは同価格です。それでも他社のスマホやラップトップには絶対に負けない「性能」と「質感」を有していて世界各地の特にお金が無い若者に熱く支持されています。

  アップル製品はユーザー目線でとても「合理的」で「価格・性能・質感」の3つを並立させるという、これまたごくごく根元的な発想で設計されています。もちろんこの当たり前のことをやるのがとても難しいのですが・・・。やっていることは何も新しくないけども、これまでの幾多のパソコンメーカーが決して登り詰めることが出来なかった高みへと辿り着いているので、「斬新」に感じるのかなという気がします。

  さてホンダ「ヴェゼル」ですが、このクルマこそがいよいよ日本メーカーが辿り着きある「高み」に一番近いところにやって来たようです。まるでアップル製品のように「きっちり使い切れそう」なほどよいボリューム感がまず第一印象です。持て余さない大きさなんだけど「画面は決して小さ過ぎない」アップルのように、車内のスペースはとても効率的です。インパネやトリムの質感も価格を考えると十分以上どころか軽く「サプライズ」なほどに満足させてくれます。製造コストはたいして掛けてはいないと思いますが、設計者のセンスでそれをカバーしてます。

  そして最近ではフランスなどでも大流行の「都市型SUV」。パソコンで例えるならば必要なスペックをきっちり収めた「ネットブック」でしょうか。制限速度が低い日本のどんな道でもヴェゼルHVならば「必要十分」に走るだけの性能はありますし、特に遅いと感じることはないです。日本メーカーが世界に誇る小型車技術は「都市環境での移動」においては輸入車を寄せ付けないだけの素晴らしいものがあります。日本の都市部の世界最高レベルに整備された道路を、法定速度を守って走る限りでは「車軸式サス」でも乗り心地が大きく劣ることはないはずです。

  「ネットブック」が持たないような、「高性能なCPU」「ハイスペックなメモリー」「大容量のハードディスク」なんてよっぽどヘビーな「ゲーマー」でない限り要りませんし、今どきゲームなんて人によっては「時間の無駄遣い」以外の何者でもないと考えるでしょう。そういう人にとっては400psオーバーに8速AT、高性能サスを装備した「高級車」なんて時間では無く「お金の無駄遣い」に思えるわけです。オーナーの皆様には大変に恐縮ですが、「レクサス、メルセデス」=「ゲーマー専用機」wwwという意見はなるほどと思ってしまいました。





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